人間が描かれているかどうかについて激しい議論
『オール讀物』を買ってきて、直木賞の選評を読む。選考委員の選評のタイトルを列挙すれば、誰が何を推したか、一目瞭然です。
- 阿刀田高「なぞ解きの名作」
- 五木寛之「『容疑者Xの献身』を推す」
- 井上ひさし「力量は十分」
- 北方謙三「十二分の力量」
- 津本陽「たしかな構築」
- 林真理子「満を持しての受賞」
- 平岩弓枝「堂々たる受賞作」
- 宮城谷昌光「合理と不合理」
- 渡辺淳一「トリックか人間描写か」
動機や人間の描き方に疑問・不満があるけど推す、という人は、阿刀田高、井上ひさし、五木寛之。不満たらたらというか、全く推してないのは、渡辺淳一だけでした。
北方謙三は選評で、「大方の選考委員の支持があり、準備していたことの半分も喋る必要がなかったのが、燃え足りない気分であった。」と書いています。本当は議論ではなく、ひとり我がままをいう爺の説得に時間を費やしたというのが正解のようです。